開発への取り組み
ソーラーに関するプロジェクトの開発は困難かつ複雑です。土木建設事業者、建物所有者、経済産業省(METI)、公益事業団体、EPC(太陽光設備設置業者)、株式投資家および金融機関、多くの個人・団体が関わっています。陸上へ設置するプロジェクトでは、地方自治体、都道府県庁、時には日本政府からの許可を必要とします。プロジェクトを成功させるためには、それぞれ所定の用件を全て満たさねばなりません。
- 陸上用ソーラープロジェクトの開発は屋上用ソーラープロジェクトよりも複雑です。しばしば多数の土地所有者達を招集し、一つ一つの土地を買収するといった手順を踏まねばなりません。 それぞれの土地に代理人が立つため、少しでも手数料を得ようと地価を押し上げることも珍しくありません。さらには、近隣からの合意を得る必要があります。その多くの場合はソーラー発電所の建設に対する合意を得なければなりません。
- ほとんどの陸上用ソーラープロジェクト開発では土地開発の許可を必要とします。この手続を終えるまでに数ヶ月掛かる場合もあります。特に林業に関連する土地開発申請手続きは非常に複雑で、例えば雨水排水池の建設が必須といった条件もあります。また、承認を得るまでに通常6ヶ月ほど要します。
- 農地開発も同様に複雑で、完了までに数ヶ月掛かります。そしていくつかの種類の農業用地、林業用地は開発が認められていません。
- 屋上用ソーラーは土地開発許可や近隣からの合意を得る必要がないため、開発が容易です。 建物所有者と20年間に渡る賃貸契約を結ぶ必要があり、経済産業省(METI)からの承認と電力会社との電力購入契約を締結する必要があります。しかし、屋上用ソーラープロジェクトへの資金調達は陸上用ソーラープロジェクトよりも困難です。金融機関側は、現オーナーが屋上のリース契約に対する価値を充分に理解していないまま他者へ転売してしまう可能性を心配するためです。通常、屋上賃貸借契約では、土地賃貸借契約とは異なり、賃借人の名が記名されることはありません。
- 本契約の目標は、日本の10大電力会社のいずれか1社から20年間にわたる電力購入契約(PPA)への署名を得ることです。本プロジェクトのマイルストーンと期限を遵守できなければ違約金が発生するリスクもあります。電力購入契約を締結するためには、経済産業省(METI)と電力会社からの要件を満たす必要があります。
- 経済産業省(METI): 経済産業省(METI)は公益事業を監督する国家機関です。経済産業省(METI)は電力購入契約の申し込みに関する規則を策定、更新しています。経済産業省(METI)ではソーラープロジェクト開発者へ設備への認定を行います。この申込み手続きで、開発者側は下記を手配します。
1. パネル設置に関する情報
2. 単線図
3. パネルおよびパワーコンディショナ(インバータ)に関する仕様
5. 保守管理体制に関する組織図
6. 施設に関する位置情報
- 注意点:日本国内では経済産業省(METI)監督のもと、10社の電力会社が存在します。
- 事前申し込み手続き: これは特定の場所への現在の送電接続容量と送電接続ポイントまでの距離に関する情報を提供する簡単な申込み手続きです。
- 送電検査申し込み手続き: 事前申し込み手続きへ認可を得た後、 PPA申請者は、経済産業省(METI)機器認定に必要な情報を詳細にまとめた送電検査申請書を提出し、申請料として20万円の手数料を支払います。3ヶ月後、電力会社側から設備への送電方法、接続のタイミング及び諸経費についての回答が届きます。通常、送電接続に関する諸経費は電力会社と開発者側で折半します。
- 電力購入契約申し込み手続き:電力会社から送電検査申請書に対する回答を受け取った後、開発者はPPA手続きを申請することが可能となります。
これはどちらかと言えば簡単な手続きで、「自己使用電力」に関する手続きと共に申請します。通常、ソーラー発電所は、発電機能を維持するために使用する少量の電力のみを電力会社から購入し、ソーラーで発電した電気はすべて電力会社へ売却されることとなります。
PPA申請が承認され、METI機器認定も取得できた段階で、買取価格及び料金が確定します。これは本手続きにおける最も重要なマイルストーンです。
- 送電接続工事契約:送電接続開始日が近付くにつれて、電力会社は開発者側のEPCと協力しながら送電接続工事を完成へと進めていきます。その後、開発者と電力会社との間で送電接続工事契約を締結します。電力会社は送電接続工事を行なう30日以内に請求書を発行します。もし開発者側が支払期限を守れなかった場合、暫定的に定められていた買取価格は失われてしまいます。送電接続工事への費用を支払うことで、PPAが有効となります。
- EPCは、設計、調達および建設の略です。 EPCとは、電力会社と太陽光発電所を建設する契約を結んでいる会社です。建設に関する一般請負業者、そして電力会社と協力してプロジェクトを進めなければなりません。ソーラーの設置は、建設工事が完了する最期の数ヶ月間の間に行なわねばならず、このソーラーがテナント側に不利益を与えない様、慎重に進めなければなりません。元請業者側が建設工事で設置した足場を活用し、EPC側の施工費低減を意識しながら作業を進めることができます。
- EPC事業を請け負うエンジニアリング会社は、包括的な太陽光発電所の設置実績が必要です。また、銀行と同様に融資の役目も担わねばなりません。ですのでEPC業者を選ぶ際に、貸し手となるEPC業者から事前承認を得るべきです。大企業レベルのEPC業者であればまず融資を行なうこと可能ですが、中小企業レベルのEPC業者よりも利息が高い傾向にあり、また、必ずしも融資をしてくれるわけでもありません。
- この数年間で、ソーラー・パネルの価格は大幅に値下がりしました。日本でも値下がりの傾向が現れましたが、世界市場に比べると小さな値動きでした。日本のパネルメーカーは日本産というの品質保証を理由に'Japan Premium' =高価格を維持しようとしています。金融機関も保証付きのソーラー・パネルにのみ融資を行っております。
- この日本の'価格硬直性(価格を下げたくないという考え)'を改め、可能な限り世界市場価格に近づけるためにも、EPC業者はコスト削減を推し進める必要があります。なお、最新のソーラー・パネル市場価格については“PV Insights”(http://wap.pvinsights.com/) を参考とすることをお勧め致します。
- O&Mとは、「運用とメンテナンス」の略です。O&M取扱事業者はソーラー施設の監視・運用保守サービスを提供しています。施設の性能や安全性を監視し、必要に応じてメンテナンスを行います。電力調整器や変圧器などの主要機器には、定期的な部品交換が必要です。
- 必ずしもとは言えませんがEPC業者の多くはO&M部門を抱えています。O&Mのみ取り扱う業者はEPC業者のように担保や融資に関する相談へのアドバイスを行えるとは限りません。
- 銀行は開発事業への資金援助を行ないますが、屋上ソーラー設置開発事業に対しては応じてくれません。
- 屋上ソーラー設置開発事業への資金調達を行う場合、開発事業者のメインバンクと業務提携している消費者金融機関と相談する事が望ましいです。
しかしながら消費者金融機関の利用は銀行よりもリスクが高く、屋上ソーラー設備のオーナーと建物のオーナーが異なる場合に債権でトラブルが発生した場合は銀行と比較すると非常に大きなリスクとなります。
銀行側の懸念点は、建物が売却された場合の屋上ソーラー施設の所有権の行方です。建物の賃貸契約内容が、ソーラー発電事業者の屋上施設に関する賃貸契約を尊重しないまま進められてしまう可能性があるためです。
- 建物の契約に関して最も好ましい状況は、建物のオーナーが関与している消費者金融機関(通常はオーナーが保有する会社の関連子会社という位置付けです)を介している場合です。
この場合であれば消費者金融機関と銀行側は利害関係にあるため、屋上施設に関する賃貸契約が反故となるリスクは大幅に減少します。その為、銀行側も安心できます。
- 資金調達の申し込み開始から認可が得られるまで約2~3ヶ月掛かります。そして、引受人は借り手に40~50種類の書類を提出する必要があります。
- 資金調達の申し込み希望者(借り手)側はその開発プロジェクトの内容に応じて返済期間15~17年(金利 4~4.5%程度)、総費用の75~100%にあたる融資を受けられる可能性があります。
なお、陸上へのソーラー設置プロジェクトの場合は約2%の金利で融資可能です。